この記事の公開日:2023.05.21
▲安芸平野のほぼ中央に位置した安芸城。藩政時代にこの地を治めたのは五藤家。周辺には、家臣たちが居住した一廓があった…いや、今も見事に遺っている。
▲それが土居廓中である。国から選定された、県内にある「伝統的建造物群保存地区」2ヵ所の内のひとつで、国交省の「日本風景街道」にも選定されているスポットだ。そこには武家地の町割・道路の形状や道幅・伝統的な建造物等が良好な状態で残されており、時代劇さながらの光景が広がっている。
▲この一廓は、藩政時代の武家屋敷群の景観を今も遺す文化財であると同時に、住民が日常生活を送る住宅地でもある。そこにはどのようなエピソードが隠されているのか、今回と次回の2回に分けて紹介します。
土居廓中ならではの特徴(四ツ辻)
▲まず目に入ってくるのが大きな建物。これは岩崎彌太郎が幼少の頃通った小牧米山塾跡である。明治中頃には医院が開設され、写真の建物は入院施設として使われた。(※左の奥が武家屋敷群の中央部)
▲元々この一廓には、農民も商人も居住していなかった。明治以降も廓中に入るには、頬被りや鉢巻等をとる必要があった。
▲その土居廓中を代表する景観のひとつが、見事な生垣(竹垣)である。土佐では武家のみに許されたものだった。一定の高さに切り揃えられた土用竹(異名:蓬莱竹)は、イザというときには削って弓矢として用いられた。
▲生垣は、土佐ならではの気候である夏の暑さや冬の寒さ等を防ぐのにも適していた。また、多雨のため通り(道路)の両脇には雨水を排水するため、安芸川の石を使った側溝が設けられている。
土居廓中ならではの特徴(塀と壁)
▲他にも、塀や壁の素材として用いられているのは、ウバメガシの生垣・木の板・土佐漆喰・古瓦を赤土で練り固めて屋根瓦を設けた練り壁等様々。これらが一堂に見られる景観も、土居廓中ならでは。(※右下は屋内駐車場の壁面)
▲元武家屋敷だけあって、どの住居も門構えが広く立派なものばかりで思わず圧倒される。(※個人の感想です)
土居廓中ならではの特徴(門構え)
▲これは、現存している建物の中では最も古く、唯一一般公開されている野村家(跡)である。(※登録有形文化財)(画面左側が北)
▲野村家は、この地域を治めた五藤家に仕えた上流の家臣であり、地元の財政・家臣の人事等の元締を行っていた。
▲これは、表門(正門)の塀の内側に設けられた塀重門である。敵の攻撃を防ぐ役割と、美観を保つため二重構造となっている。また表面から玄関(組み写真左上)までは、安全確保のため折れ曲がり枡形のように配されている。(※組み写真右上は、南側塀重門の内側から見た正門の光景)
土居廓中ならではの特徴(造り)
▲これは、野村家屋敷の平面図である。右下の住居部分は木造平屋となっている。
▲玄関部分は敵の立ち回りが困難になるよう、あえて狭い(3帖の)造りになっている。その横には武者隠しと呼ばれる壁(右の写真)があり、家臣が身を隠し来訪者を確かめる構造となっている。
▲居間等の各部屋は南北に縁が設けられ、風通しが良くなるよう工夫されている。(※夏季の土佐は、とにかく暑いのである)
▲この屋敷は300坪あり、敷地の中央部に住居が配されている。そしてその北側(裏側)には菜園や井戸が設けられている。
土居廓中ならではの特徴(屋根瓦)
▲突然ですが、ここで問題です‼ この組み写真は野村家の屋根部分を集めたものですが、この地域ならではの特徴が見受けられます。一体それは何でしょうか⁉
▲それでは、今一度アップで見てみましょう、如何でしょうか⁉
▲答えは「瓦の向きが屋根によって異なる」でした。この地域は通常でも風雨が強く、さらに台風被害も多く発生するところ。そこで、屋根の高さや屋根の向きによって異なる風向き(強風)から屋根を守るため「右瓦」と「左瓦」に使い分けをしていたのです。
▲先人の知恵って凄いんですね‼
江戸時代 この地を治めたのは五藤家
▲ここに「家臣の屋敷群がある」ということは、その家臣たちが仕えた「城主がいる」ということ。土居廓中の通りから北東を見上げると、そこに安芸城(跡)を眺めることができる。そのエピソードは後編で詳しく…。
コメント
安芸の土居廓中がきたかぁ!
ここも知る人ぞ知る処だよね
土居廓中は武士が住んでいた当時のままの町割が今も残っていて風情のある道の両脇には家屋敷を囲む武の備えを兼ねた竹垣や漆喰塀に練り塀のほか防備を怠らない門構え気候風土に適応した屋根瓦の向きの使い分けなど長い歴史に根ざした知恵に基づく有り様は時代劇の世界に入り込んだような趣があるよね
保存のための手入れは大変やろうなあ
竹の生垣なんかは季節ごとに世話がやけるろうねえ
地区で野村家跡が唯一一般公開されているという事はほかは今でも人が住んでいるということかねえ
その方々は殆どがかねての武家の子孫が住んでいるということになるんかねえ
廓中に訪問して地区の雰囲気を味わうと静謐という言葉が似合うところぜねえ
地区の人たちは道や構造物への開発・改善などをおいそれとは俎上にあげにくい本当に稀有な土地に住んでいるわけやから伝統的建造物群保存地区としての歴史の中で生活して行くということは地区外の者が想像する以上の役割を担っているということなんやろうねえ
凄いことやわ
土居廓中は歴史を感じられる処やからもっと宣伝したいような気にかられるけど宣伝すると穏やかに暮らす地区の人々に迷惑をかけてしまいそうな気もして複雑な思いになるよね
これからも地区の方々が清閑に暮らせて今まで守り守られてきた歴史的価値を残して行ってもらえたらありがたいね
土居廓中ならではのひとつである生垣は本当に見事ですよね。
でも植物なので、定期的なメンテナンス作業(手入れ)が不可欠となります。
この「手入れがあってこそ景観は保たれる」ということを忘れたくないものです。
つまり、訪れる人のマナーが問われます。
大人の行動として、常に肝に銘じていたいと思っています。