この記事の公開日:2023.04.29
▲吉野川・四万十川と並んで「四国三大河川」のひとつである仁淀川。その水質の良さは、幾度となく日本一に輝いている。別名:仁淀ブルーの名はあまりにも有名だ。
▲清らかで豊かな水の恵みを受け、仁淀川周辺地域では古くから和紙作りが盛んに行われてきた。そこで今回はそのひとつ、吾川郡:いの町を訪ねてみた。
▲訪れたのが、伝統工芸品に指定された「土佐和紙」を振興する目的で造られた、日本初:紙の伝統産業会館(※別名:いの町紙の博物館)である。(※博物館に関する画像は、許可を得て撮影・公開しています)
生活に馴染む和紙
▲ペン文化の西洋ではインクが滲まない滑らかな洋紙が、一方、毛筆文化の日本では墨が染み込む和紙が発展した。
▲昔から和紙は、とても丈夫であるという特長を活かし、書くためだけのツールではなく、障子・照明器具・遊び道具・服・人形・インテリア等、様々な形に姿を変えて私たちの暮らしに寄り添ってきた。
▲明治以降、万人に密着し馴染みがある和紙と言えば、きっと紙幣だろう。唯一魔力を持つ和紙だ。
和紙の材料とは
▲和紙の原料には、様々な植物があることをご存じだろうか!?
▲原料となる植物が持つ特長を活かし、使用目的により使い分けられている。
▲その植物を実際に見るなら、高知市五台山にある県立牧野植物園がお薦め。ところで、原料の中でも有名な(一度は耳にしたことがある)ものといえば、楮・三椏・雁皮が御三家だろう。
▲楮の特徴=靭皮繊維は太く強い。土佐楮として有名。用途=特徴障子紙・表具・美術紙 etc…
▲三椏の特徴=靭皮繊維は細く強い。用途=金糸・箔金紙・書道用紙 etc…
▲雁皮の特徴=靭皮繊維は細く薄い。用途=印刷・版画・日本画 etc…
▲他にも、様々な植物が和紙の原料として用いられている。(※写真は一例)
▲和紙の原料である植物繊維は水より比重が重たい。そこで紙漉きをする際には、繊維を水中でムラなく分散させるため「ねり」としてトロロアオイが混ぜ込まれる。
この地で 和紙作りが盛んな理由とは
▲いの町で和紙作りが盛んな理由は、①和紙作りには清らかな水質と一定の流水が欠かせない、その点仁淀川は最適である。②和紙の原料になる植物が町内外で栽培されてきた。③地元出身の吉井源太(※後述)が、高度な紙漉き技術や用具作りに携わった etc 等が挙げられる。
▲ところで原料から製品(和紙)になるまでには、とても多くの時間と労力(段階と手間)がかかる。(※写真左上から右に)蒸す→剥ぐ→煮る→水洗い・さらし→ちり取り→たたく
▲(写真左上から右に)こぶり→紙漉き→脱水→乾燥→断裁→荷造り
▲例えば、楮の原料から出来る障子紙は、重量にして僅か4%しか残らないという事実をご存じだろうか!?(※写真では右→左がそれを表している)
和紙作りの立役者 吉井源太
▲いの町紙の博物館のマスコットキャラクターにもなっている吉井源太。(※この人形は、地元の方の手作りである)
▲土佐和紙の凄さに関する歴史は以下の通り。
▲「なんだか難しそう‼」と読み飛ばしたアナタ。色付き文字の部分だけをなぞっていくだけでも、土佐和紙の凄さがお分かりになるのではないだろうか!?
いの町紙の博物館では 他にも…
▲和紙ならではの特長を活かして制作し、施設内に展示されているジオラマ。人々の暮らしと和紙作りの様子が、細かい部分まで再現されている。
▲さらに、和紙の特長を活かして開催されている「高知国際版画トリエンナーレ展」。この秋(2023年10月~12月)には、第12回を迎える。日本の伝統和紙の産地:高知で開催するからこそ意義があるイベント。毎回、世界各国から多くの作品が高知に送られて来ている。
コメント
よさこい節に「土佐の名物サンゴに鯨紙に生糸にカツオ節」とうたわれている高知の特産品
今はサンゴはどうなの?鯨はダメよねえ生糸も殆ど聞かないけどカツオ節はまずまずかねえ
さて紙やけど紀貫之が紙作りを強く勧めた?歴史は古い!
高知で紙といえば「いの町」と「土佐市」に「日高村」がまず思い浮かぶところやけど
古いといえば百年以上前の明治の末頃に紙の町「いの町」から高知の桟橋の間に輸送のため路面電車が開通したとあるけど経緯初めて知ったよ
首都に走る路面電車と同じ略称音の「とでん」で名の知れた電車は産業用に開通させた?
今は普通の乗合電車やけど貨物車が(も)通っていたということなんかねえ
「いの町」の往時の紙産業の隆盛がしのばれる話やね
もう60年ほども前やけど小学校から「いの町」の紙工場へ見学に行った覚えがあるよ
さらに長じて土佐市の手漉き和紙の工房も見学させてもらったこともあり戦時中に女学生だった母が勤労動員で風船爆弾の風船部を和紙とコンニャク糊で作ったという話を聞いていたので原料の和紙はこんなふうにして作られていたのかと感慨ひとしおだったなあ
現代のハイカラな造りの住居には障子・襖はもとより畳の部屋も少なくなってきていると聞き及んでいるけど温かみのある和紙製品などは身近にずっと残ってもらいたいし高知の紙産業も発展を続けて行って貰いたいねえ
現代では、和紙はインテリア素材としても重宝がられていますね。
幼い頃家に障子があり、枠の数ヵ所が破れていたのを思い出しました。
その部分を、サクラの花びら形に切った紙片で貼って穴埋めしていました。
さらに指に唾をつけて押し当て、障子に穴が開くことを楽しんだり(幼子時代の遊びを)していました。
現代では、和紙にコラージュ(貼り紙)した灯りや、別のものを漉き込んだものが照明器具としてモテはやされているなんて。
時代が変われば、捉え方も随分変わるんですね。