
この記事の公開日:2025.08.25




例え重要文化財だって 自然は容赦しない


▲県のランドマーク高知城は、明治初期の廃城令や昭和の戦災を免れた「天守・本丸御殿・追手門」など15棟の建造物が現存している。

▲しかし大空襲を免れた翌年、昭和南海地震が発生し大きな被害を受けてしまう。


▲そこで昭和23~34年にかけて、傷みの激しかった高知城の大修理が行われた。

▲その後も、国の重要文化財(※高知城)を守り未来へ引き継いでいくためメンテナンスは繰り返し行われている。
過去の 南海トラフ地震は どのように…


※天災は忘れられたる頃来る①の詳細はこちらから




宝永地震の 記録によると…


▲高知県西部に位置する黒潮町に、延長4kmに及ぶ白砂の入野松原がある。

▲長宗我部時代に防風のため植林し、現在、松原は「名松百選」・砂浜は「日本の渚百選」に選ばれ国指定の「名勝」にも認定されている。

▲宝永地震の大津波で松原は流失してしまったが、住民の手によって再び植樹され、昭和南海地震の際には防潮・防風林として被害を最小限に抑えたといわれている。

▲松原の北側では、広い砂地でラッキョウ栽培が行われている。

▲松原にキャンプ場やトイレ・シャワー設備等が整備されているためか、通常時期は一般観光客数よりサーファーたちで賑うという珍しい現象が…。(※一般遊泳は禁止)

▲他にも、砂浜を活かした「裸足マラソン(※全国公募)」や「Tシャツアート展(※全国公募)」などが開催され人気を博している。
安政南海地震の様子が 当時のメディアで記録されている


▲安政南海地震後に佐川町で発生したデマ被害を記した絵馬である。余震の中「大塩が来る」というデマに村民が牛馬を引いて高い山に登り、提灯や松明で昼間のようだったと伝わっている。

▲安政南海地震の様子を(被災者を勇気づけるため)戯画風に描いた「絵本大変記」である。(※老人が宝永地震を知らない若い女性に記録を見ながら語り掛けている)
もちろん「自然災害伝承碑」という形でも…

▲土佐市にある四国八十八箇所の清滝寺と青龍寺を結ぶ道の脇に石碑がひっそりと佇んでいる。県内沿岸部に残る地震碑のひとつ、萩谷名号碑である。

▲それは、海岸から1km離れた萩谷川の土手沿いにある。安政地震の犠牲者の追善と被害の教訓を後世に伝えるため当時多くの往来があった場所へ、地域住民が費用を出し合って建立した。

▲大きな災害に見舞われた人々はその都度それが「どんな被害をもたらしたのか」「次に見舞われたときどんな事に気をつけないといけないのか」ということを石に刻み、次の世代に伝えてきた。

▲この石を「自然災害伝承碑」という。通信や記録手段が限られた当時の人々は、未来へ向けて懸命の思いを石に託したのだ。

▲安政地震後、宝永地震時の伝承に基づき「すぐに山へ避難した者」は無事だったが、「衣食の調度をしたり、慌てて船に乗って沖に出た者」は津波で亡くなった。「地震後はすぐに山の平らな場所に逃げよ」という教訓が記されている。

▲後年発生した昭和南海地震の際には、教訓が活かされ津波による死者は1名だったという。
高知大空襲に続いて襲われた 昭和南海地震(郡部)








高知大空襲に続いて襲われた 昭和南海地震(高知市)










▲どんなに街の近代化が進んでも、水害のリスクから解放されたわけではない。
あの大水害を 決して忘れない

▲高知市東部に位置する大津地区は舟入川が、北側の布師田地区は国分川が横断している。

▲いたるところで都市開発が進んでいるが、昔から稲作が盛んな地域である。

▲そんな地区を1998年9月、自然界の不意打ちを食らう出来事が襲った。いわゆる「’98豪雨」である。

▲一般的に、雨が一時間に30㎜降ると土砂降りの大雨と言われているが、’98豪雨時の高知市では最大130㎜/hの雨が降った。

▲近年この地区を襲った二つの水害の後、その経験を風化させないために「’98豪雨で…再び災害の無いことを願って…この碑を…」と刻み建立された。

▲’98豪雨当時、全国向けマス媒体が大々的に報じたのは、海の向こうの大リーガーのホームランについてであり、本件を報じることは皆無に等しかった。そこで高知県知事が、被災直後の全国放送で「地方差別の報道ではないのか⁉」と緊急アピールを発信したほど。

▲’98豪雨後、水害に強い河川を目指して大改修が行われた舟入川。階段は、流木やゴミなどが引っ掛からないよう川の流れの向きに逆らわず、しかもストライプ状に設けられている。
自然災害伝承碑以外でも 過去の大地震の痕跡が見られる

▲普段は、穏やかな表情を見せる町並みではあるが…

▲高知県の海沿いの各市町村では…その日に備えて津波避難タワーの建設が進んでいる。(※津波避難タワーの詳細はこちらから)

▲これは、市の海岸線全域50数kmが「ユネスコ世界ジオパーク」に認定された室戸市。

▲そこでは、大地が今も隆起を続けている証しが見られる。

▲人は穏やかな暮らしが続くと「過去の悪魔のような出来事」を、つい「忘れがち」になる生き物である。いま、先人たちが書き記してくれた記録の教えをどう活かすのかが問われている。

▲ときに自然界は、牙を剥くのだということを忘れてはいけない。
コメント