
この記事の公開日:2025.02.10

▲高知県の右下に位置し、かつては台風銀座と呼ばれた激しい気候の室戸市。

▲今回と次回は「他の町とは一線を画すものとは⁉」を視点に、室戸市:吉良川町をご紹介。
まずは 吉良川町の基礎知識から

▲吉良川町は室戸市の西端と中心街の中間に位置し浜街道沿いに形成された町で、室戸ユネスコ世界ジオパークの一画となっている。

▲取り上げるエリアは東の川と西の川に挟まれた地区で、国の重要文化財として県下初の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定された界隈である。(※県下では安芸市:土居廓中との2ヵ所のみ)

▲ここでは、白壁・水切り瓦・いしぐろなどの建造物が一体となり町並みを形成している。(※後述)


▲この町は、第二十六番札所:金剛頂寺と第二十七番札所:神峯寺との道中にあるため、歩き遍路さんが町中を通って行く姿に遭遇することも…
町の特徴① (山に向かって段差や坂に…)

▲町がある室戸半島全体が、地震による隆起と波による浸食を繰り返してきたことを以前の記事で紹介した。今回の主役:吉良川の町並みは、段差(地形)の上だったり…

▲山の方に向かって緩やかな坂状になっている姿からもそれらが伺える。

▲いずれも太平洋に面した町ならでは、地震や水害などの自然災害から身を守るための生活の知恵が随所に活かされている。(※後述)
町の特徴② (備長炭で繁栄し町並みが…)

▲我が国で家庭燃料にガスが一般的となる以前は、炭が生活に欠かせないものだった。

▲明治時代、木炭の需要の増加に伴い吉良川町でその生産が始まった。元々林業が盛んだった吉良川町は日本の代表的な備長炭の生産地となり、大正~昭和にかけて町の繁栄の頂点を迎えたのだった。

▲繁栄がもたらされた町では、人々が競って家を建て直していった。吉良川町の伝統的建造物のほとんどが明治~大正にかけて建築された家屋である。

▲後年土佐備長炭としてブランド化された室戸市の炭は、現在では日本一の生産量を誇っている。その品質の良さから飲食店などで調理に使用されたり、(インテリアや巾着状の)消臭剤や(金属の音色を活かした)風鈴として人気を博している。

▲究極は、アイスの材料としても活用され室戸市の名物となっている。
町の特徴③ (山側の集落では…)

▲山側の集落では家屋を低く抑え、周りをいしぐろ(石垣)で囲っている。

▲暴風雨に見舞われることが多い吉良川町の人々が知恵を絞った結果、現在のような町並みを形成したのである。

▲いしぐろには様々な形があるが…主に用いられたのは浜の石や河原の石である。

▲形は、原形を活かしたり…

▲半割りにして用いた。

▲そして、それらを空積みや練り積み(※赤土と漆喰で接着)にしている。(※家々で異なる)

▲他にも、かつては水を得るのに苦労した山側の集落では井戸を共同で使用していた。現在もその名残りが町中のいたるところで見受けられる。
町の特徴④ (海側の集落では…)

▲海側の集落では雨風から建物を守るため水切り瓦が多用されている。

▲水切り瓦とは、高温多雨の高知県において雨風による劣化から建物を守るためのもので、壁面に複数段の突き出した瓦の庇のことである。つまり、上部から流れてくる雨水を直接地面に落とすことで漆喰壁を守るのだ。

▲雨が横から降るといわれる室戸半島に於いては特に理にかなった手法だ。ちなみに水切り瓦の設置は大変高価で、その家の経済力の象徴でもあったという。
町の特徴⑤ (他にも 雨風が激しい地域ならではの対策が…)

▲雨風が強いといえば、屋根はもちろん右瓦と左瓦を使い分けている。

※参考記事:安芸市:映画のセットにいるような光景①土居廓中 / 朝ドラ主人公:二つの故郷④(南国市ごめん)
町の特徴⑥ (メイン通りは旧街道)

▲かつては高知市~室戸中心部を繋いでいたのが旧街道である。

▲街道は江戸末期~明治にかけて形成された。(※現在は海側に国道55号線が整備されその役割を担っている)

▲街道の両側には計画的な屋敷割りによる短冊形屋敷が並び、山側と海側の地区を形成している。

▲各家の主屋は街道に面した町家(※店舗併設の住宅)であり…

▲商家の建物は、中二階建て(※ワンフロアで高低差を設けた間取り)となっている。
町の特徴⑦ 今も住民が居住する 郵便局跡

▲1926年(大正15年)個人により建築され、1965年(昭和40年)頃まで郵便局(※民間による郵政の代理店)として使用されていた。

▲ちなみにポストは町並み保存のためのもので、現在使用はできない。

▲住民が今も居住しているレトロな建物。郵便局として使用されなくなった現在でもその経緯を物語るかのように鬼瓦には「〒」マークが付されている。

※参考:ごめん(南国市)のやなせたかしロードには、現在でも使用されている赤いポストが設置されている。
町の特徴⑧ 町並みの景観を守るために…

▲伝統的建造物群保存地区内においては例え自宅であっても、勝手に外観の色や形を変えたり、取り壊し(※伝統的建造物は取り壊し不可)は出来ない。

▲そうすることで景観は守られ、未来へと継承されていくのだろう。
町のランドマーク 御田八幡宮


▲吉良川の町は御田八幡宮を外して語ることはできない。
御田八幡宮で開催される 秋祭りとは⁉




▲昼は各集落の花台(山車)が町を練り歩き、夜はその花台が御田八幡宮の境内で豪快に舞い回る。(※詳しくは今秋公開予定)
《次回予告》この町ならではの 雛まつりとは⁉




▲県下各地の雛まつりのきっかけとなった「吉良川の町家雛まつり」。町並みと人家を活かした開催方法は都会ではまず真似できないだろう。
コメント
土佐の高知の室戸市吉良川町は備長炭の盛業で名をはせ大正から昭和にかけて町の繁栄が頂点を迎え往時を偲ばせる伝統的建造物の街並みが残っているとは嬉しい限り
近代の住居建築ではコンクリートやブロック塀が見慣れた景色やけど一昔前の石垣土塀の建物はなんと風情のあることかねえ
使われなくなったとはいえ昔ながらの赤ポストを据えた郵便局だった建物は郷愁を誘われるわ
よくぞ残しておいてくれたもんや
ビルや現代建築物群の街並みの中で神輿や山車が引き出される祭りが執り行われる風情も一興やけど吉良川町の御田八幡宮の秋祭りは伝統的建造物の町並みの中を練り歩くとは何とも絵になるわ
近年各地で寄進を受けた人形をたくさん飾りつけた雛祭りが報道されることがあるけど吉良川町の伝統的建造物の町並みの人家を活かした雛祭りは落ち着いた趣があり格別の価値があるよねえ
いつまでも続いてもらいたいねえ
(ひと昔前まで)黒塗りの木壁が珍しくなかった時代が過去のものとなって久しいです。
その面影が遺る町並みは行政の指導・補助などが不可欠で、消滅を免れているのが現状です。
人々が「その存在価値に気づいたときには手遅れになっていた」事例は過去の多くの出来事が物語っています。
「栄枯盛衰」について少し心を寄せてみることが、(現代人にとって)大切な時になっているのかもしれませんね。
ブログ記事がそのきっかけになれば幸いです。