
この記事の公開日:2023.08.10



▲四国:高知の右下に、学校の面影を色濃く残すユニークな水族館があります。それが2018年4月に開館した「むろと廃校水族館」です。それは127年の歴史を閉じた小学校を改修し、全く新しい発想から生まれました。(※現在、まちの小学校の数は最盛期の1/3以下に減少している)



▲室戸市が廃校の活性化を目的に活用方法を公募した結果、ウミガメの学術調査発表の場と子どもたちの笑顔を再びこの地に取り戻したいとの思いから、廃校水族館という案が採用されました。(※学校ではなく廃校という名称がミソ)

▲ゆえに改修の主体は室戸市ですが、運営・管理は「NPO法人:日本ウミガメ協議会」が担っています。

▲開館後は入場料・グッズ販売・研修の受け入れ・独自の運営方法(※詳しくは後述)等の取り組みにより、室戸市からの援助なしで独立採算を成功させているから驚き‼

▲そこでは、誰もが経験した小学校時代のノスタルジーを誘う展示方法が人気を集めています。今回は、小学校がどんな風にリノベーション(※新たな機能や価値を付け加える改装工事)され、どんなアイデアが活かされているのかを中心にご紹介します。
廃校水族館のある場所へは わざわざでないと…

▲四国高知の右下で、V字型に突出しているのが室戸岬である。

▲室戸市は、この岬を中心に50数キロの海岸線を有している。

▲その海岸線の東端に近い場所にあるのが「むろと廃校水族館」である。

▲水族館が大人気(成功)の裏には、近辺3つの漁港が大きく関わっている。(※詳細は後述)
最初は グー⁉・チョキ⁉、それともパー⁉

▲実は、水族館が開館する前には「本当に地元へ貢献するのか⁉」「税金の無駄遣いではないのか⁉」と疑問視する声も少なくなかった。


▲しかし蓋を開けてみると、開館2年後には(地の不利をハンデとせず)累計入館者数が、当時の室戸市人口の27倍にも上がった。それをマスコミが放っておくわけがない。国内のマスコミだけでなく、あのCNNも取材に訪れたという。(※ちなみに、2022.末には累計入館者数が室戸市人口の44倍を記録した)
大きな特長① 学校の備品をインテリアに活用


▲この水族館の大きな特長として2つ挙げられる。まず①設備は学校当時のものを出来るだけ使う点。あくまでも学校らしさにこだわり備品は地元の学校等から集めたので、インテリア購入費は基本0円。

▲その証の一例がこの写真。この施設は元々が「椎名小学校」だが人体模型の蓋には「羽根小学校」と書かれている。
大きな特長② 生き物たちは 漁師から譲り受けたものばかり

▲特長の二つ目は、②飼育生物たちは全て近隣の漁師から無料で譲り受けたものである点。ゆえに、展示する魚を購入したことはない。(※一部、職員が趣味で釣った魚も展示されている)

▲そのため、客寄せ〇〇〇的な目玉の生物はいない。その代わり、他の水族館では素通りされるような生き物(50種類1,000匹以上)が暮らしている。その分馴染み深い生き物たちに、郷愁を誘う雰囲気の中でお目にかかることが出来る。

▲漁では、どうしても出荷出来ない生き物が網にかかってくる。船が港に帰り着くと早速水族館へ連絡を入れる。

▲連絡を受けた水族館のスタッフは、直ちに(魚が元気なうちに)港へと引き取りに出掛けていく。このシステムが水族館の生き物たちを充実させ、私たちの目を楽しませてくれているのだ。(※目の前が海で漁港が近いため輸送のタイムロスはほとんどない)
水槽のある教室は オープン形式に


▲直径が3mを越える円形水槽がある教室は廊下との壁をなくし、ゆったり眺められるよう工夫されている。



▲そして教室の真ん中に設置された水槽では、生き物たちが円形ガラスに沿って泳ぐ姿を360度の方向から見ることが出来る。

▲大水槽の周りや廊下には小さな水槽が並べられ「あっ、あれだ‼」「他では見たことない‼」というような生き物たちが間近に見られる。
その他の教室は このように変身した(一例)

▲研修のため学校の団体生徒が「勉強する」、一般客が「見る」等に活用されるハイブリッド教室。かつて研修生の中には、就職先を「室戸で漁師」にした人もいるそうだ。

▲教室後ろの壁にはイカ墨で書かれた習字が貼られている。それにしても、至る所に学校の備品がさりげなく用いられている。何から何まで懐かしい光景だ。

▲今にも授業が始まりそうな理科実験室。

▲ちなみに、OIRAが通っていた小学校(※全校生徒100人あまりの小規模小学校)にはなかった教室なので、懐かしさと言うより新鮮な驚き‼だった。

▲このオルガンは千葉市の個人から送られたものである。父親の形見であったが、TVで廃校水族館のニュースを見て「ここだ‼」と思い寄贈したそうだ。ちなみに送り主は、この水族館の前身の椎名小学校と同じ姓だったという。何とも不思議な縁である。(※入館者は自由に弾くことが出来る)

▲水族館に魚を提供している定置網の漁師は毎日仕事なので、その子どもは父親が不在がちで遠出が難しい。そこで、子どもたちに「何時でも来て気軽に楽しんで♪」という思いが込められているそうだ。

▲水族館は、魚を提供してくれている漁師と未就学児は無料で、地元民には入場料割引制度が設けられている。だが、元々入場料金は安く設定されているのでお得感は半端ない‼ (※個人の感想です)


▲海や魚をはじめ生物学に関するものがずらりと並ぶ本棚の書籍類も、棚は小学校時代のものをそのまま活かしている。スライド窓はもちろん開くので、部屋の中にいて潮風を感じることが出来る。(※書籍は自由に閲覧可)
小学校と言えば プール

▲サメ・エイ・ウミガメ等が泳ぐ屋外の大水槽(プール)。水槽のスケールがデカいので迫力満点‼ なおウミガメは、調査終了後に標識を装着して再び海に戻されていく。

▲雨の日には傘を差しながら、2Fから大水槽(プール)へ降りていく。これは、真夏の日差しの下でも活かせそう。(※実はOIRAはこの仕掛けに一番感銘を受けた)
楽しいだけじゃない、問題提起も…

▲ここは元々が学校らしく「ただ楽しい♪」だけでなく「問題提起‼」も忘れてはいない。これらは回遊浮遊物の(人工)ゴミの一部で、生き物たちが餌と間違えて食べたものである。

▲ゴミは海辺に捨てなくても川を流れたり風に飛ばされ、やがては海に集まってしまう。そしてゴミ以外にも、ご覧のように様々な環境問題(要因)が発生している。

▲しかし、ただ黙って目をそらす人たちばかりではない。今日も、命が消えないための闘いが人知れず行われている。

▲「自分たちは何時だって人間の行いを見ているよ‼」との叫び声が聴こえてくるような経験だった。

▲ツケは巡り巡って、やがては私たち人間の命をも脅かしていく…。たった一人がゴミを捨てないというささやかな行為でも「確かな道となるのだ‼」と、改めて考えさせられる水族館だった。
コメント
子供たちがかぶりつきで水槽の魚群を見ている冒頭の映像は廃校利用の水族館の導入画面としてバッチリやねえ!
グルグルまわって360度から眺められる水槽はたいちゃ来館者を楽しませるろうねえ
近ごろは地区の学校が休校・廃校になって地域の元気がなくなったとか過疎が進んだなどという話を聞くことがあるけど室戸の椎名地区は小学校を廃校のままにせず水族館に模様替えするというアイデアで地域社会を盛り立てたんやね
廃校跡といえば工場などの企業誘致や宿泊施設にしたなどという話があるけど水族館にしてみようとはチョイと浮かばん機転ぜねえ
目利き・知恵者がいたもんよねえ感心するわ!
改修後は行政の援助なしに独立採算で運営しているとは今どき見上げたもんやわ
飼育生物を近隣漁港から無料で調達するなど地域密着型の運営に成功し生物の展示室のほか学校の原型を留めて理科室あり音楽室もあり図書室まであって設備・備品などは学校当時の物を使って大人の郷愁を誘い足を運んでもらう才知満載で大したもんやわ
やむなく廃校となって行く学校施設の利用に関して手本となる英知があふれた廃校水族館が軌道にのっているとは郷党意識をくすぐられるよ
室戸ええもん作ったねえ
アイキャッチ画像まで褒めていただきありがとうございます。
全国で問題になっている廃校。
役目を終えた後はそのまま朽ち果てるか、活用してもその方法が画一的になりがちです。
そんな中で、日本で初めて学校の面影を色濃く残した水族館にかじ取り(決断)した室戸市には頭が下がります。
「初めて」と言うのがミソですね。
そして、その結果が見事に成功しているという点にも驚きです。
水族館がある場所は「ついでに」という位置ではなく「わざわざ」という位置にあります。
しかし、その「わざわざ」に出向いて行くという人の心を掴んだ展開に、全国の自治体からの視察が絶えないという現実が全てを物語っていますね。
現地へ訪れる際(高知市からを例にすると)右手(海岸線)には、ユネスコ世界ジオパークの光景が広がっています。
辿り着くまでもが楽しい!?四国の右下は、県外の方はもちろん県内の方たちにもぜひ一度は訪れて欲しいスポットです。