この記事の公開日:2023.08.16
▲四国の右下で、V字型に突出した室戸岬がある高知県室戸市。
▲2011年9月、海岸線全域50数kmが「ユネスコ世界ジオパーク」に認定された。
▲ちなみに「ジオパーク」とは、Geo(地球)とPark(公園)を合わせた造語である。それは、国際的に価値のある地質遺産を保護し自然環境や地域の文化への理解を深める場所のことを指す。2023年5月現在国内では10ヵ所が認定されている。(※イエロー&レッドカード制で、登録抹消となることがある)
台地は 今もこのような自然の営みが…
▲この地は、地質調査により世界で初めて付加体であることが証明された。
▲普段これらのことを意識することは少ないが、その裏では以上のような活動が絶え間なく行われるため地震が発生している。
▲プレートの運動により絶えず大地が動いている地域を「変動帯」と呼ぶが、室戸地域では変動体の中で人々が生きてきた証しが幾つも存在する。
変動体の証しを 目にすることが出来るものは…
▲例えば室津港。宅地(画面右)と比べて海面(左)が低いことにお気づきだろうか!? これは地震の度不規則に隆起したことによる。港湾部は掘り下げ工事を繰り返すことで船溜まり機能を保ってきた。一方陸上部分には段差(点線部)が発生した。
▲他にも、山の部分でも証しを見ることが出来る。この地域は台地が幾つもあり「海成段丘」と呼ばれる平らな形状(段々の丘)になっているのだ。
▲海成段丘は日当たりや水はけが良いので、美味しい様々な農作物を栽培するのに適している。これは人々の生活の知恵ともいえるだろう。
▲室戸市は山の形状が特異であるということが、海辺から眺めてもよく分かる。
ジオパークの光景を あれこれと…
▲さて、ジオパークと大地の営みの基礎を理解していただけた(と思う)ので、いよいよ今回の本題である室戸ジオパークの姿をご覧いただこう。(※今回は西の玄関口:奈半利町側から室戸市に入って行った)
▲国道55号線を走っていると、突然海側にピラミッドの先端のような岩が目に飛び込んでくる。
▲「表と裏」ともいえるような不思議な形状をしている。
▲ところでジオパークといえば、その代表格が室戸岬である。青い空・白い灯台・砕ける白波・黒や茶の岩・緑の亜熱帯植物等、色彩のコントラストが見事で、光景に「映えて」いる。
▲ちなみに有名なアコウの木は、強風から我が身を守るため、根を岩を飲み込むように張わせ、枝を横に伸ばしている。そのため、別名:しめ殺しの木とも呼ばれている。
▲普段の波は、浜辺に点在する岩礁や奇岩等が消波ブロックの役目を果たし、砕け散る白波がお客人の目を楽しませてくれている。しかし、一旦荒れ狂うと…
▲ご覧の通り、その光景は一変する。黒潮が沖合を流れるこの岬は、かつて台風銀座と呼ばれていた。1961年に「最大瞬間風速84.5m/s以上」と記録されている。ちなみに「~以上」とあるのは、強風で測候所の風速計が破壊されたことで観測不能になったためである。(あぁ、恐ろしや‼)
室戸岬の有名な岩を 3つ挙げるとしたら…
▲マス媒体に度々登場する有名なものがこれ、タービダイト層である。
▲黒い部分は泥で、白い部分は砂が固まって出来たもの。等間隔になっているのが特徴である。水平に堆積した後に回転して立ち上がったため、縦向きの縞模様になっている。
▲かつて、武士や貴族が被っていた帽子(烏帽子)に似ていることから名づけられたエボシ岩である。
▲マグマが地下で冷え固まった斑レイ岩という岩石で出来ている。
▲斑レイ岩はとても硬いため、周囲の地層が波の浸食で削られた後も背が高い岩場として残された。
▲これも斑レイ岩で出来た、ビシャゴ岩と呼ばれる巨岩。
▲この岩には伝説が残っている。昔「おさご」という絶世の美女がいた。しかし彼女は言い寄る男たちを煩わしく思い、この岩から身を投げたという悲しい伝説である。
さらに 海岸線を走ると見られるものとは…①
▲日沖・丸山海岸の日沖漁港に三角おむすびのような岩がある。特に名前はないが、とても印象的な佇まいをしている。
▲これはマグマが冷え固まった玄武岩の岩石で、その表面をよ~く見ると丸い塊(枕状溶岩)がたくさん見受けられる。
▲正体は、ドロドロのマグマが海底から噴出し海水で急激に冷やされたもの。それは、表面が固まったように見えても内部はまだドロドロで熱いため再び噴出してしまう。これが繰り返され積み重なって出来た。
▲足場は整備されているように見えるが、岩礁が多く荒波で危険なため、魚釣りは難しい。
▲国道のすぐ下にありながらも、海底でのダイナミックな営みが見られるレアなスポットである。
さらに 海岸線を走ると見られるものとは…②
▲先ほどの日沖漁港から徳島方面へ約5km離れた国道沿いに、海中から直立する岩群がある。他とは明らかに異なる光景に目を奪われる。それが鹿岡鼻の夫婦岩である。
▲国内に数ある夫婦岩の中でも最大級を誇る高さである。
▲岩の表面に見られる無数の穴は、長年の塩食作用によって出来たタフォニと呼ばれるもの。つまり、塩の結晶が成長し岩に割れ目(穴)をつくったものである。
▲それにしても夫婦岩はかなりの高さで絶壁だが、それに縄を掛けた方法がふと気になった。
室戸の海岸線全域における 特徴的な光景は…
▲室戸の海岸は一般的にいわれる、波打ち際に細かな砂がある浜辺はほとんどなく、道路の側の海岸から即岩場となっているのが特徴である。(※正確には一部のスポットに、砂利の浜辺はある)
▲人々が自然と巧く共存しながら暮らしてきたのが分かる光景。自然の岩を排除するのではなく受け入れ、そこに人工物を融合させてきた。
▲室戸の浜には様々な種類や形をした岩や岩石が多く見受けられるが、全てがマス媒体やネットで紹介されているわけではない。この記事を見ている貴方が実際に訪れた際には、自分なりの奇岩を探してみると面白いかもしれない。必ずや、室戸の自然の営みを実感することだろう…‼
室戸ジオパークの 全てが分かる施設はこれ‼
▲最後に、ジオパークの全てが分かる施設をご紹介しよう。
▲それは「室戸ユネスコ世界ジオパークセンター」である。
▲室戸の風土・歴史・産業等を学べるだけでなく、カフェや土産物店も揃った総合観光拠点である。
▲この施設も「むろと廃校水族館」と同様、廃校になった学校(中学校)をリノベーションして造られている。そのため、至る所に学校当時の名残を感じることが出来る。
▲月光に照らされる室戸ジオパークの浜辺の姿は一見の価値あり‼ 疲れた身体と心が「じわじわっ…」と癒されて行くのを実感したのだった。
コメント
高知在住のころ室戸へは公私にわたって数十回は行ったことがある老生やが土佐湾の青海原を右に眺めて行き左手に見て帰りと散々っぱら往来したのに奈半利と室戸の境界それも国道脇にある視界良好の海辺のピラミッド先端型の岩はそう認識して通った記憶がないのよ
加領郷の港を過ぎて直ぐの海辺に鎮座してるのに当然目にしていたはずなのに毎回青空と海に見とれて気はそぞろで通っていたのかと今回紹介され呆れて可笑しくなったわ
ええ目印になるあんな岩があったんやねえ
このブログでは室戸の海沿いの岩の数々を紹介してくれているけど行くたんびに当たり前の見慣れた景色として何気なく眺めてきただけやったが今回の画像を見せてもらうと見れば見るほど色・形などが興味深くて面白いねえ
烏帽子岩は大魔神がかぶったかと思わす程の大きさやしビシャゴ岩も美女が身投げするほどデッカイし日沖漁港の岩もまたドッシリした岩で存在感抜群
鹿岡鼻の夫婦岩も見上げるほど壮大起立して立派
地下のマグマが噴出したり造山運動で岩盤が隆起しねじ曲がり
室戸の海成段丘は穏やかな風景と見受けられ見晴らし・眺望も抜群やろうねえ
空からの台地の景色は見惚れるけどこうなるにはどれだけの力が加わってきたかと想像すると人知を凌ぐ時間の経過と地球の息吹に目まいがするねえ
室戸は地球の筋骨隆々とした姿が垣間見える岩や台地の展覧会場やね
いつもご覧いただきありがとうございます。
室戸の海岸線はスポット毎に異なる表情を見せてくれます。
ブログ記事をきっかけに新たな発見があったとのことで何よりです。
ご紹介した甲斐がありました。
一般的には「地震=海岸が盛り上がる、地面にひびが入る、崖が崩れる」レベルの知識の方が多いことでしょう。
しかし大地では、私たちの想像をはるかに超えた営みが今も行われているんですね。
「自然は、人間の手ではどうしようもない位偉大なんだ」ということを改めて勉強しました。
それにしても「大地の展覧会場」とは、見事な捉え方ですね。