
この記事の公開日:2025.09.22


▲今回訪れたのは第三十七番札所の岩本寺である。

▲前後の札所との距離が遠いため、途中の宿坊としての役割も果たしている。

▲岩本寺は、聖武天皇の勅願により行基が開創したのが始まり。後年弘法大師がこの地を訪れ発展させた。

▲戦国・江戸時代に武将や藩主から寺領等の寄進を受け、神仏習合の札所として隆盛を誇った。

▲寺には五体の本尊(不動明王・観世音菩薩・阿弥陀如来・薬師如来・地蔵菩薩)を祀っており、それぞれの真言を唱える必要がある。
歴史的建造物と POPアートとの出逢い


▲一見すると、普通の門前町の雰囲気だが…

▲よ~く見ると…

▲世界で活躍する湘南(神奈川県)出身のアーティスト“SHETA”氏のPOPな作品が、境内のあちこちを彩っている。

▲これは、住職が「若い世代にも寺に興味を持って欲しい」と策を模索していたとき、人気に火がつく直前だった“SHETA”氏と出会い、制作を依頼したのが始まりである。

▲その背景には深刻なお遍路さんの減少問題があった。

▲さらに滞在時間の短さも問題だった。近年はバスで巡礼するお遍路さんが多く、参拝後にはすぐ次の目的地に移動してしまいがちなのだ。(※写真はイメージ)
そこで目を付けた一例が 現代アートとのコラボだった

▲そのお姿が凛々しい⁉ 阿吽の仁王像。

▲仁王門の壁面に掲げられた2枚のPOPアート作品。実際にお遍路さんにインタビューし、そこで受けたインスピレーションを表現したとのこと。

▲ハートは一人ひとりの心を、ホースと水は四万十川とお遍路を通した心の浄化を表現。お遍路の伝統と文化が次の世代へ受け継がれて欲しいという願いが込められている。
現代感覚は 本堂にも反映されて…

▲仁王門をくぐった先に本堂があるが…

▲そこまでは、さりげなく参拝者をPOPアートが誘っている。

▲その本堂にも、歴史と現代感覚が融合した仕掛けがなされている。

▲天井には、花鳥風月・人間曼荼羅・Mモンローをはじめ…

▲さらには住職が描いた板絵をなどを含む、洋画・日本画・水彩画・水墨画など575枚の絵で埋め尽くされている。

▲これらは、本堂を1978年(S53)に再建した際「お寺にもっと足を運んでもらいたい」と、先代の住職が公募し全国の老若男女から寄進されたものである。
境内には 昔ながらの光景も…

▲大師堂は境内では最も古い建物で、200年ほど前に建立された。

▲歓喜天を祀る聖天堂は、木造で円形という珍しい造りとなっている。商売繁盛・夫婦円満・子授け祈願・病悩祈願などにご利益があると信仰を集めている。

▲これは納骨檀がある納骨施設である。諸事情で供養が困難な人のために永代供養を行っている。
で、新旧融合のお寺は どうなった?

▲新しい取り組みの開始当時は「お寺に相応しくない」と眉をひそめる人もいた。だが、マスコミを通じて全国から注目を得た取り組みは町の名物として徐々に市民権を得るようになって行った。

▲その後、お遍路さんたちだけでなく町の人々からもアドバイスをもらえるようになった。

▲「人間の価値観は時代によって変わるもの」という住職の信念が、現代アートとのコラボを実現させ、寺や町の活気に一役買っている。

疲れた身体を癒す 光景が…



▲岩本寺(四万十町)から次の金剛福寺(土佐清水市)間は約83kmあり、県内の札所間で一番長距離となっている。

▲四万十町西隣の黒潮町。(大方地区)。その町の海岸に黒松林が生い茂る場所がある。それが土佐西南大規模公園の一角を成す入野海岸(入野松原)である。国の名勝指定を受け、日本渚百選にも選ばれている。

▲1945年(S20)、アメリカ軍の上陸に備え陸軍より伐採命令が出されたが、当時の営林署長の懸命な努力によって伐採を免れ、防風保安林として人々の暮らしを支えてきた。

▲また入野松原は公園内にあるため、周辺にはイベント広場をはじめ、キャンプ場・体育館・テニスコートなどの環境が充実している。

▲東西4kmにわたり広がる入野海岸は「世界でただ一つ・世界で一番大きな美術館」として有名。会場名は美術館だが特に建物があるわけではない。広大な砂浜自体が自然美術館なのである。

▲風を見る(感じる)という光景・照明は太陽と月あかり・天井は何処までも続く空・BGMは心地よい波の音。これらは全て美術館のコンセプトであり、作品の一部なのである。

▲水質が最高ランクの“AA”を誇る砂浜美術館(入野海岸)の浜辺はサーファーたちの聖地で、国内有数のサーフポイントとなっている。

▲砂の粒のきめ細かさを活かした様々なイベントがこの地で開催されている。その一つが、裸足で砂浜を走る日本唯一のマラソン大会「高知大方シーサイドはだしマラソン全国大会」(毎年G.W開催)である。

▲大会は個人・親子・カップルなど6部門に分かれており、2025年の第40回大会には全国から1,455人が参加し潮風と砂の感触を楽しんだ。

▲ランナーたちのたくさんの足跡も、砂浜美術館の作品となる。

▲「砂は思ったより柔らかくて、裸足マラソン最高!」という参加者の声が全てを物語っていた。(※写真はイメージ)


旅は まだ終わらない…

▲高知県内の札所を「区切り打ち」で巡る旅も、残るは2ヵ寺…
コメント
岩本寺の御本尊は不動明王・観世音菩薩・阿弥陀如来・薬師如来・地蔵菩薩の五体らしいねえ
無辺世界に明るくない迂生でも名に聞く仏世界の有名どころが祀られちゅうと思うと有り難味が際立つお寺さんやねえ
聖武天皇の勅願により行基が開創し後年弘法大師が発展させたとの謂れがある古刹らしいけんど門前の階段から境内やら本堂の天井の板絵までもとハイカラな志向が見てとれてほかの札所とはちょっと趣が異なり興味深い古寺やねえ
新しい取り組みを始めた頃の風当たりは相当なもんじゃったろうけんど押し切った住職の指向はあっぱれよねえ
老生の贔屓の銀幕のスターは本邦にあっては原節子さんアチャラカではマリリン・モンローやき板絵のマリリン・モンローは是非見たいところ
しかし岩本寺は前後の札所から随分離れた位置にあるねえ
今の距離で土佐市の青龍寺から50数キロ次の土佐清水の金剛福寺までは80キロメートル超え
札所巡りが歩くしかなかった時代のこの距離は大変
まさしく野を越え山越え難行修行の行程やったろうねえ
歩き巡礼であった当時に岩本寺を出立して次の札所の金剛福寺へ向かう道中の入野松原の海岸景色は山道を歩いてきたお遍路さんにはこじゃんと開放的な気分になったろうやいか
防風林防災林として先祖から営々と維持してきた風光明媚な入野松原の松にも先の大戦で軍部の場当たり的で罰当たりな伐採命令を跳ね返した歴史があったんやねえ
防風林の伐採じゃゆうて折角の天然の障壁をわざわざ切り倒して敵の上陸作戦に便宜を図るが如き命令を考えつくとはビックリ!
確かに世界で一番大きな美術館と言われてもおかしゅうないTシャツアート展やはだしマラソンができる広大な砂浜やが大戦中ここにアメリカ軍が上陸してくる?と想定したとは不可思議
どういて軍港・軍需工場・軍需施設などもない純農村地帯に敵が上陸してくるじゃゆうて考え的外れな命令を出したかねえ?軍部は!
貧すりゃ鈍するとはよく言ったもんよねえ
いつ如何なるときにも冷静かつ理論的で理性的な判断をせないかんとの教えが松籟として聞こえる心地がするわ
さて高知県内の札所巡りも室戸に始まり残すは幡多地区の二寺となり何か名残が惜しいような心持
今回紹介のあった岩本寺から金剛福寺まで延光寺へ至る行路のこれまた長いこと
なにやら幕引きは急がず先延ばしして貰いたいような心境よ
いつもご覧いただきありがとうございます。
「岩本寺」は「御本尊が五体のため、真言を五種類唱えなければいけない」ということを
巡礼者のどれだけがご存じなのかは分かりません。
撮影時に様子を伺っていると「?」というシーンにも遭遇しましたが、
大切なのは「謙虚な気持ちで唱える」ということだと思います。
皆さん疲れた身体を労わるようにしながらお参りしていたのが印象的でした。
ところで高知県には、東は「琴ヶ浜(芸西村)」、西は「入野の浜(黒潮町)」というように、海岸線にふたつの名勝が存在しています。
いずれも浜の長さが4km前後あり、弧を描くような形状をしている点もそっくりです。
このサイトでは「琴ヶ浜」に関する記事を、何本かに分け様々な視点から取り上げています。
改めて読み比べていただくと新たな発見があるかもしれません、ぜひ…。